1.鍵のサイズ |
鍵には十数種類のサイズがあり、個々の時計専用に作られた場合を除き鍵のサイズを示す数字がある。
自分の時計の鍵の番号を憶えておけば便利であるが番号の系列が英国とフランス/スイスでは異なるので気をつける必要がある。
英国では数字が大きくなるに従い鍵のサイズも大きくなるがフランス/スイスでは逆に数字が小さい程鍵のサイズが大きくなる。 |
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昔の古い鍵の写真 |
現行のベルジョン社製
鍵束の写真(#00~#12の14本) |
2.鍵の機能別スタイル |
ラチェット鍵(Ratchet
Key): |
逆回転の防止機構。
継ぎ目が斜めの波状になっており、波を上る方向には空回りする。
この機構のためぜんまいを巻く場合に空回りできるので鍵から手を離して持ち代える必要がない。
残念ながらこのラチェット部分が痛んでしまっている物も多い。
比較的高価な鍵である。 |
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ブレゲ鍵(Breguet
Key): |
ブレゲが考案したラチェット鍵の1種。
頭の部分が縦の円筒になっているのが特徴。
類似でよく見られるものとして円筒の替わりに花型の輪がついているものがある。
通常はプレーンなものが多いが、写真の下段左から2番目のように豪華なロココ様式の彫刻が施されたものも稀に見られる。 |
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クランク鍵(Crank
Key): |
クランクのように回せる取っ手がついており、クルクル
と回して巻くことができる。
16〜18世紀中期までの時計に多く見られる。
非常に古い形式なので数が少なく高価な鍵である。 |
ベンチ鍵(Bench
Key/Birch Key): |
万能鍵。
鍵がチャックになっておりフリーサイズで使用できる便利な鍵である。
写真中、一番上の木製ハンドルが付いたものは時計師が多くの時計を効率良く巻き上げる為に使用した物。 |
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ベンチ鍵の写真 |
ベンチ鍵を開いたところ
の写真 |
鍵を閉じたところの
写真 |
ユニバーサル鍵(Universal
Key): |
中央のリングから放射状に各種サイズの鍵が生えている。
1本あると便利である。 |
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3.鍵の装飾スタイル |
装飾が施された鍵の例。
右からロココ様式の彫刻が施された金張りの豪華なブレゲ鍵、2番目はハンドル部に複雑な彫刻を施したラピスラズリを使用した金張りの鍵、3番目は犬のフィギュアが付いた真鍮製のラチェット鍵、4番目は時計店の宣伝と王冠のフィギュアが付いた真鍮製の鍵、5番目はロココ彫刻の付いた真鍮製の鍵。 |
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4.ラチェット鍵およびブレゲ鍵を使用する場合の注意点 |
ラチェット鍵を購入する場合、気をつけなければならない大事なことがある。
(泣いても知りませんぞ。)
鍵巻懐中時計には鍵穴が文字盤にあるものとケース裏のものがある。
前者はフランスやスイス等の時計に多く見られ、後者はイギリスの時計に多く見られるが、この2つは巻くときの回転方向が逆になる。
さらにこれがフュジー機構になっていると、通常それぞれゼンマイを巻き上げる方向がゴーイングバレル(香箱駆動)と逆になる。
●整理するとこのようになる |
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文字板側巻き上げ |
裏蓋側巻き上げ |
フュジー |
時計方向(cw) |
反時計方向(ccw) |
ゴーイングバレル |
反時計方向(ccw) |
時計方向(cw) |
※
CW:ClockWise/時計回り
CCW:CounterClockWise/反時計回り
このため波目が反対のラチェット鍵を買ってしまったとすると大変悲しい思いをするわけである。
しかし、普通に見られるのは時計回りに巻き上げる物が多く反時計方向で使える物はあまり目にしたことがない。
by みゆき |