機械時計の動力源<ゼンマイ>
動力の伝達部分 <輪列>
輪列からエスケープへ
<ガンギ車とアンクルのかみ合い>
時計の心臓部 <テンプ>
時計の緩急
エヤリーの定理について
トゥールビヨン脱進機について
   
   

















 

輪列からエスケープへ


<ガンギ車とアンクルのかみ合い>

機械時計のムーブメントを見る機会がありましたら、ぜひ、ガンギ車とアンクルの興味深い運動の様子をご覧になってみてください。

ガンギ車とアンクルのユニークな関係は、血気盛んな喧嘩っ早い夫と、それをなだめすかしながらも愛情深いサポートを怠らない奥さんとの関係を連想させます。

ガンギ車はカギ型の歯車をもつ特殊な形状をしていて、そのカギ型の歯はアンクルにかみ合っています。

このガンギ車とアンクルのかみ合い運動によって、車を伝わってきた回転運動はアンクルの往復運動に切り替えられるのです。


●ガンギ車

ゼンマイが生じた力は輪列を伝わってガンギ車に到達します。
輪列はすべて滑らかに回転するように調整されていますので、輪列の最後に位置するガンギ車の回転を抑制するものが何もないと、ゼンマイに貯えられている力は激しい車の回転と共に一挙に消滅してしまいます。

これではゼンマイ仕掛けのオモチャと同じになってしまい、時計は「時を正確に計測する」機能をもつことが出来ません。

そこで、ガンギ車まで到達した力を抑制する機能が必要になり、その任を負っているのがアンクルなのです。


アンクル

アンクルはT字型をした金属の先に、角のように二本のルビーがはめ込まれたものです。
このT字型の一方についているルビーを「入りづめ」、もう一方についているルビーを「出づめ」といいます。
ルビーの形状は4角柱で、アンクル体(T字型の金属部分)にはめ込まれ接着剤で固定されています。
アンクルは「アンクル真」と呼ばれる軸で支えられており、ここを中心として左右に動くことが出来ます。




ガンギ車とアンクルの運動

それでは、ガンギ車とアンクルが引き起こすユニークな運動をみてみましょう。

ガンギ車の回転は、今アンクルの出づめに引っかかって止ってしまいました。
アンクルの出づめはガンギ車の歯に押さえつけられてしまい、アンクルさおも出づめ方向(図の右方向)に押されてドテピンというものにぶつかって止っています。











さて、ここで「ある力」がアンクルに対して働きます。
「ある力」とは後に出てくる「テンプ」の一部である「振り石」の力のことなのですが、ここでは話を簡略化して解りやすくしたいのでその説明は省きます。
読者の方はガンギ車の力以外に「ある力」がアンクルにもたらされるとだけお考え下さい。

その「ある力」はアンクルを入りづめ方向に押してゆきます。
そうすると、アンクル体は入りづめ方向(図の左方向)に押され、出づめに引っかかっていたガンギ車の歯が外れます。

ガンギ車は絶えず回転力をもっていますので、出づめが歯から外れると早速回転しようとします。

ところが、ガンギ車が少しだけ(一歯だけ)回転できたのもつかの間、今度は入りづめが降りてきました。
アンクルが「ある力」によって入りづめ方向(図の左方向)に押されたからです。

降りてきた入りづめはガンギ車の歯をさえぎります。
歯は入りづめの障害に会い、入りづめにぶつかり、強く入りづめを押しつけながら停止します。


このようにしてガンギ車の歯はひとつだけ回転しました。

この後、「ある力」は逆方向に働きはじめ、アンクルは先述の図説しました運動の全く逆の運動をはじめます。
すなわち、今度はアンクルは出づめ方向(図の右方向)に「ある力」によって押されはじめ、入りづめがガンギ車の歯から外れ、ガンギ車が一歯だけ回転し、出づめに遮られて停止します。

この「ある力」が左右交互にアンクルに働きかけることによりガンギ車は一歯づつ送られていくのです。




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