機械時計の動力源<ゼンマイ>
動力の伝達部分 <輪列>
輪列からエスケープへ
<ガンギ車とアンクルのかみ合い>
時計の心臓部 <テンプ>
時計の緩急
エヤリーの定理について
トゥールビヨン脱進機について
   
   

















 

動力の伝達部分

< 輪 列 >

ゼンマイによって作られた勢力は歯車の集まりである「輪列」(りんれつ)に伝えられます。

典型的なウォッチの輪列をみてみると、巻き締められたゼンマイによって香箱が回転をはじめ、その回転力は2番車(にばんぐるま)に伝わります。
さらに、2番車の回転力は3番車に伝わり、さらにそれは4番車に伝わることになります。

そして、4番車の回転力はガンギ車という特殊なカギ型をした歯をもつ車に伝わり、ガンギ車以降、回転力は振幅運動に切り替えられるのですが、このことはまた後ほど詳しく説明します。



車の構成要素


われわれはムーブメントの回転している部分をよく「歯車」と簡単に呼びますが、時計の構造を詳しく知るためにはもう少し厳密な用語を使う必要があります。
一般の方が「歯車」と呼んでいる部分は、時計学上「車」といわれています。
そして、「車」の一部分が「歯車」と呼ばれているのです。

時計学でよく使われる用語は数もさほど多くはなく覚えやすいのでぜひ記憶しておいてください。

車の構成部品の用語は以下の通りです。


歯車 : 車のいちばん外側のギザギザのついた外周の部分
かな : 歯車の内側にあるもうひとつのギザギザ部分
軸   : 車の中心軸である「幹」の部分
ほぞ : 軸の両端に位置する細くなっている部分

※注 (歯車)
更に厳密にいうと、歯車は「リム」と「歯」に別れるのですが、便宜上「歯車」と一言で述べて説明を続けます。

※注 (時計用語)
日本の時計用語は主にアメリカやスイスの時計学書を翻訳して作られているので、同じパーツでも呼び方が異なることが多くあります。時計用語辞典などをみても本によってまちまちの訳語が使われていることもあります。
特にどれが絶対に正しいという基準はないのですが、一般に多く使われている言葉をこのページでも使うことにしています。

●車のかみ合い

香箱の歯車は2番車のかな(2番かな)にかみ合っており、2番車の歯車は3番車のかな(3番かな)にかみ合っています。
3番車の歯車は4番かなにかみ合っており、4番車の歯車はガンギかなにかみ合っているのです。

このようにして各車は回転速度を変えているのです。



●回転速度

ゼンマイからの力が車を介して伝わるごとに、伝えられた車の回転速度は上がっていきます。

一般にゼンマイは24時間で5.5〜6.5回転ほどけますが、その回転は車に伝わり、一般に4番車は1分で1回転します。
このため、4番車の軸に秒針を取り付けたスモールセコンドタイプのウォッチも多数存在しています。

●ほぞ穴

各車の支えはどうなっているかというと、車の軸の一方は「地板」というムーブメントの土台部分、もう一方は「受」という支え板のようなパーツによって挟まれるようにしてセットされています。
車の軸の両サイドにある「ほぞ」という細い部分が、「受」や「地板」の「ほぞ穴」という部分にささって支えられているのです。

●受石 (ルビー)

車の軸を支えている「ほぞ穴」には一般にドーナツ型の小さい人工ルビーが使われています。
ルビーは硬度も高く、摩耗に強いので力のかかる車の軸を受るのに適しているのです。
このルビーのことを「受石」といいます。

受石の中心部、穴のあいている部分のまわりには「油溜り」という窪みがあり、ここに注油します。
「ほぞ」の回転を滑らかにするためです。

 

●あがき

受石のセッティング位置は重要な意味をもっています。
上下の受石の距離が短すぎると軸が強く挟み込まれて車軸の上下間の遊びがなくなります。
この遊びのことを「あがき」といいます。

あがきが少なすぎると、衝撃などによって地板と受にひずみが生じた時などに車の回転を妨げます。
また、あがきが多すぎると、車が上下に遊ぶようになり、他の車やパーツにさわってしまい、そのために回転を妨げます。

時計の調子が悪くなる原因はこういうところにもあるのです。



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