褐色時計の随筆
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「時計のようで時計でないもの」


今日は、かけだし古時計マニアが執念を燃やす話にお付き合い下さい。
今でもかけだしマニアの私ですが、さらにかけだしの頃の出来事です。
久しぶりに横浜でもうろうろしに行こうと思い立ち、立ち寄った骨董街でのこと。。。

数軒立ち並んだお店のうちの一軒に吸い寄せられるように、フラッと入り、ショーケースに並んだ懐中時計達を何げに見ると値札のない小振りな機械が目に入りました。
(なんじゃこりゃ、ま、まさか。おい、おいまさかこんなところに。でも異国情緒あふれる街と言われる横浜だし、ひょっとしてひょっとってことだって。。。)

「すいません、これ見せてください。」

「ああ、これ? これ壊れてて動かないよ。」とご店主。

「壊れたのも好きなんです。(え、えへっと愛想笑いする私)」

「なんか、振り子で動くらしいんだけど振っても動かないんだわ。」

「すいません、中見せてもらってもいいですか?」

「ほれ。」
(うむむ、ぬぬぬぬ。まさか、このイカ型の重りは自動巻懐中では??しかも、しかも、あろうことかダイアルのインデックスが10分割まさか、フランス革命の後にわずかの期間あったという10進制時の時計かぁ! そうだよ、きっとそうだよスモセコだって100分割で短針は一本針だし。。。ドキドキドキドキ。。。んでも、リューズなくて押し込むことしか出来ない棒しかないし、大体、輪列はあるけど香箱もテンプもないぞ。取れてるわけじゃなくてもともとないもののようだぞ、なんじゃこりゃ?????) 「これ、おもしろいですね。壊れててもいいのですが、おいくらでしょうか」
「ま、ン円といいたいとこだが、壊れてるから半額にしとくかな。」 (うひょぉー、マジっすか。やりー。) 「それではいただいていきます。(努めて冷静に)」


浮かれまくって店をでるとさっそく、知人に電話で報告。

「なんだか、わけわからん物が手にはいったんで、これから持っていきますね。なんか、香箱もテンプもないんだけどなんか自動巻の10進時計みたいなんですよぉ。」

「な、なにぃ、それはみたいばい。すぐもってくるばい。」

「あいよぉ。」
ガタンゴトンガタンゴトン 移動の電車の中であらためて落ち着いて観察するとどうやったって時計として機能するもののように思えない。

なんだ? これは。。。
ピンポーン 「さぁ、早くみせるばい。」

「いや、これなんですけどね、やっぱ時計じゃないですよ。10進時計にしては大分新しい時代の物のようだし。なんなんでしょうね??」

「おお、重りがカックンカックンしておもろいおもろい。ふむふむ、わははこの輪列だとどうやっても時計にはならんぞ。」

「やっぱり。。。。んじゃこれはなんだろう???」

「なんだろねぇ????」 :   

:この間、おもりの戻りを調整するバネの調整を行いながら考えている。


: 「こ、これはひょっとして。そうだ!」
(声を揃えて)

「万歩計だ!!」

かくして、希代の珍品を入手したはずが健康器具となったのでした。

しかし、ここでめげてはかけだしマニアの名がすたります。
そうです、私はこの日いつか自動巻の懐中時計と10進時計を手に入れるんだと誓ったのです。
そして、その執念は半分実り昨年、今度こそ本物の自動巻懐中を手に入れました。10進時計は・・無理だろなぁ。。
いやいやあきらめてはいけない。
願いは、思うことあきらめないことでかなうのです。

今、私の時計キャビネには万歩計と自動巻懐中が仲良く並んでいます。
ここに10進時計が仲間入りする日はくるのでしょうか?
その日が来たら、みなさんにも報告しますね。(^^) 余談:さて、おもろいものが入手できたと、コーヒーとお菓子で歓談しに
なじみのお店にこいつを持っていきました。
すると、店長様から一言。

「アーー! これ、何年か前におもしろいと思ってアメリカで買い付けてきて、店にならべたらその日のうちに万引きされちゃったのと同じやつだ。。。。」

「へっ???。。。。」

「開店以来、後にも先にも万引きにあったのってこの1回なんすよ。」

さて、この万歩計君がたまたま同じ品だったのか、仕入れ品が流れていった物なのか今となっては誰にもわかりません。

ねぇ? 万歩計君。これって君のこと? 嘘をついたってね、香箱がないだけにすぐバレルんだよ!


お後がよろしいようで。(^^;

by ふる
 


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