自動巻き時計、考える | ||||||||||||||||||||||||||
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自動巻きの時計で多いトラブルは「巻き不足」と呼ばれる症状です。 巻き不足は、ゼンマイがよく巻かれないために起こるのですが、原因は以下のようなものが考えられます。 ・使用者の運動量の不足 ・機械の巻き上げ効率の悪さ さて、使用者の運動量不足について考えてみましょう。 「時計は約8時間携帯すれば動き続ける」と言われていますが、この表現はあいまいです。 どのような状態での8時間携帯かがわからないからです。 携帯といっても、持ち主が「歩いている」こともあれば、「肉体労働をしている」こともあれば「事務仕事をしている」こともあれば「座っている」こともあります。 この動作によって巻き上げ量は大きく変わってきます。 目安としては、時計を腕につけている限り、ごく平均的な事務仕事を行っている方は大丈夫と考えられます。 自動巻き時計が止ってしまう時にはまず、この「運動量不足」を疑ってみてください。 原因不明の止りに悩まされ、何度も修理に出したが、「正常」と言われて戻ってくる。 おかしいと思って調べてみると、事務仕事をしている人が仕事中は時計を外していた、という笑えない話しもあります。 次に機械の巻き上げ効率について考えてみましょう。 自動巻きのローターは、右に回っても左に回ってもゼンマイを巻き上げる方式(両方回転巻上)と、どちらかの方向に回った時しかゼンマイを巻き上げない方式(片方向回転巻上)という2種類の方式があります。 両方向回転巻上式の方が巻き上げ効率がよく、少しの運動で多く巻き上げることができるのです。 このように、機械のローター巻き上げ方式によっても巻き上げ効率が違いますので、「前使っていた時計なら大丈夫だったのに、今度のはすぐ止る」なんてことも起こり得ます。 それでは両方向回転巻上の方が優れているかというと、一概にはそうは言えません。 両方向巻上方式は、絶えずグイグイとゼンマイを巻き上げているので、滅多なことでは巻き不足になることはありませんが、香箱真その他のパーツに大きな負荷をかけるために摩耗が早まります。 どちらの方式を取るかはメーカーの時計作りのポリシーによります。
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